[movie/スカパー]es[エス]

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発売日:2004/03/03
価格: ¥ 2,625

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原題: Das Experiment
監督: オリバー・ヒルツェビゲル
出演: モーリッツ・ブライブトロイ, クリスチャン・ベルケル, ユストゥス・フォン・ドーナニーほか
2001年/ドイツ/119分/カラー

かつて新聞記者をしていたタクシー運転手のタレク( モーリッツ・ブライブトロイ)は、新聞の求人欄に心理学実験の被験者募集広告を見つける。新聞にその体験談を売り込むことを目的に、実験への参加を決めたタレク。内容は囚人と看守役に分かれて、ルールに従ってそれぞれの役をこなすというものだった。しかし、実験は思わぬ方向へと向かい始める。


昔、「青い目 茶色い目」という教育番組を学校で見させられました。ある日、先生が突然「茶色の目の子は劣っている」ということを言うのです。茶色の目の子はみんなから仲間はずれにされ、哀しい目にあう。次の日、今度は水色の目の子に問題があると先生が言い出します。すると今度は水色の目の子がいじめられる。そうして差別というものがどういうものか、肌の色という自分ではどうしようもないことで差別を受けるということがどういうことなのかを学ばせるという授業でした。その方法が正しいとか間違っているとかいうわけではなく、ここで私がすごいなと思ったのは、「茶色の目が悪い」という先生のひと言で、昨日まで一緒に仲良く遊んでいた子供を簡単に差別できる、その人間の適応能力(?)の高さです。

この映画の実験は実際に1971年にスタンフォード大学で行われた実験を元に作られているものです。元に作られているだけで脚色はあるようですが、ここで思い出したのが、この「青い目 茶色い目」を見たときの怖さです。看守と囚人、圧倒的に有利な状況の上に、相手は「悪い奴」という保証がある。このスタンフォード監獄実験については、様々な本も出ているようで、シチュエーションが人の凶暴性を引き出すことを証明するものとして引用されてるようですが、私はこの悪い奴という保証が暴走を引き起こすんじゃないかなあと思うんですよね。きっと戦時中の特高や、ナチ、最近ではアブグレイブの虐待事件まで、どんな人でもこういうシチュエーションになったときに、暴走する可能性があること。そう言えば、イラク人質事件の自己責任論も、それに近い感じもありました。あれもマスコミ、そしてネットでの多くの人の発言が、人質への非難へ向いていた(社会が悪人というレッテルを保証した)ことが、その「世論の暴走」を招いたと言えなくもありません。別に囚人などの特殊な状況による虐待ばかりでなく、そういった日常的なレベルでも、こうした暴走は起こっているのです。

ラストはエンターテイメント的な味付けが強いのですが、いろいろ考えさせられる映画でした。

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