アンダーリポート / 佐藤正午著

アンダーリポート

アンダーリポート

著者: 佐藤 正午

出版者: 集英社

発売日: 2007-12




十五年前のあの事件には、実は別の真相があったのでは・・・。事件の第一発見者であり、被害者の妻をよく知っていた彼は、被害者の娘の訪問と、彼女が十五年間拘ってきた疑問を聞いたことで、事件を振り返ろうとする。

恐ろしく細かい日記をつけてる主人公が、日記と当時の調書を元に十五年前の人々を振り返る物語。ミステリとしてはあんまりひねりが無いというか、まあまあかなと思いますが、人間関係の複雑さと、行間を読まなくてはならないようなやりとりが、この著者らしくて私は好きです。うーん、ただストーリーの中心である事件自体が薄い感じなので、全体的な印象は薄かったですね。この主人公も他人と必要以上の距離を置く感じ(日記の付け方からも全てにおいて客観的な感じ)なので、その雰囲気がこの小説全体に行き渡っていて、読んでる時は面白いのですが、読了後に強烈な印象を残さない物語になっています(なってしまっているともいう)。妙に印象に残ったのが雪の日の電車の中のやりとりだったのですが、ここだけ妙に生々しい感じだからでしょうか。好き嫌い分かれると思いますが、強烈な物語を読んだ後の清涼剤としてはおすすめかも。

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