[exhibition]夢と追憶の江戸

三井記念美術館で開催中の浮世絵展「夢と追憶の江戸」を見てきました。慶應義塾大学の教授で、浮世絵コレクターでもあった高橋誠一郎の浮世絵コレクションのうち、300点を100点づつ3期に分けて展示中。各期全点入れ替えで、3回見ないと全部見られないという、なんか贅沢な展覧会です。

葛飾北斎の「富嶽三十六景」や、歌川広重の「東海道五拾三次」といった有名どころはもちろん(ただ、これらは点数が多いので、3期見ても全部は見られないかも)、明治初期の月岡芳年、落合芳幾といったちょっと変わった作品も出ていますし、初期の鳥居清信や、錦絵を大成した鈴木春信とか、浮世絵の変遷が目で見て分かるという展示になっていて、楽しめます。

浮世絵は難しいことを考えずに楽しめるのが良いです。題材が美人、身近な光景や風俗、そして景色というと、現代の写真に近いものがあるなあというのも改めて感じました。特に明治期の月岡芳年辺りは瓦版の挿絵でも有名ですから、報道写真に近いものがあったのかもしれません。

個人的に興味深かったのが深川の光景が意外と多いな—ということ。富嶽三十六景の「深川万年橋下」の解説に「小名木川が隅田川に合流するところの橋」といったことが書かれていて、「あ、あれか!」とかなり親近感が沸きました。富嶽三十六景はかなり広範囲になっちゃいますが、広重の江戸名所百景は自転車巡りできるかも、と思ったのでした。

土蜘蛛を題材に、実は天保の改革を揶揄したものという歌川国芳「源頼光公舘土蜘作妖怪図」は「ゲゲゲの鬼太郎」の世界、月岡芳年の「月百姿 弁慶」も現代アニメっぽいなあと思いました。月岡芳年は国芳の弟子、水木しげるに影響を与えた河鍋暁斎も国芳に弟子入りしてたことがあったそうなので、日本の絵の世界はこうして続いてるのかもしれません。

京極夏彦『続巷説百物語』の初版特典のカバー裏を飾る浮世絵のうち、「奥州安達がはらひとつ家の図」が出てます。間近で見ると、あの構図はやっぱり衝撃的です。血みどろ絵の異名を持つ「英名二十八衆句」(落合芳幾筆)も毎回展示替えで違うものが出るらしいので、あまり普通の展示では見ないですし、お好きな方は是非。河鍋暁斎は今期の「おいわ」のみの出品のようです。

コメント