iOS版Kinoppyを使ってみて


まだ日本にAmazonが無かった頃、私はよくBookwebを使っていました。オンラインで注文できて、家に送ってもらえるのはとても便利でした。ただ、bk1ができ、Amazonが日本に進出し、その間にもいろいろなオンライン書店が現れては消えて、配送料が安かったbk1、そして配送が早くかつ品揃え豊富なAmazonへとシフトしてしまいました。職場が大学図書館という特殊環境であるために、だんだんリアル書店にも行かなくなり、いつしか本は職場かオンライン書店で見るものになってしまいました。

長らくご無沙汰していたBookwebから、iOS用電子書籍プラットフォームKinoppyが公開されました。iPad2を手に入れて、PDFリーダーとして秀逸だということは強く理解しましたが、やっぱり本を入れてみたい。できれば新しい本を。というわけで、さっそくダウンロードしてみたのです。

まずは案外電子書籍が多い伊坂幸太郎を検索。おーたくさん検索結果が出てきた!と思いきや、ほとんどが紙の書籍のみ。上に「電子版のみ」というチェックがあったので押してみると、なんと2冊になってしまいました。脊髄反射でそのことをツイートすると、中の人から「Apple課金による価格事情で販売許可がおりない」という返信が。Android版では5件表示されてる写真もつけてくれました。

帰ってきて、こんどはMacで紀伊国屋Bookwebにアクセス。電子書籍で再度「伊坂幸太郎」を検索してみると、今度は3件になってしまいました。Android版が勝ち組ってことでしょうか。さらにケチなことに気づいてしまいました。PC版での電子書籍では、525円の『チルドレン』がiOS版だと600円なのです。あらーiPadは負け組?

Kinoppyの新刊情報に内田樹『街場のメディア論』がありました。詳細を開くと、菅谷明子『メディア・リテラシー』が「同じ分野の売れ筋商品」として表示されました。「これも面白そう」と思ってクリックしてみると、クリック前の表紙画像には「電子版あり」と書かれていたのに、詳細表示では紙版しか表示されません。PC版では電子書籍があるようなので、ちょっとしたプログラムミスかと思われます。もしかしたら近々バグフィックス版が出るというのはこうした部分でしょうか。

また、菅谷明子『メディア・リテラシー』は、紙の書籍版は売り切れでした。もったいないなーと思いました。ここで「あ、面白そう」と私が思ったわけですから、他にもそういう人が沢山いるはず。本来なら電子書籍に売り切れはないのに、こんなところで行き止まりになってしまうのは機会損失としかいいようがありません。

同時に、電子書籍を売るほうとしては、これからいろいろ仕掛けを考えるのは面白いだろうなとも思います。Amazonの「あなたへのおすすめ」が気持ち悪いくらい的を射ているように、同じプラットフォームで電子書籍を買いたくなる工夫をしていけば、あなたへのおすすめがどんどんブラッシュアップされて、自分で探さなくても、面白そうな本が自動的にピックアップされそう。その場でダウンロードできるのは、「1晩考えてやっぱりやめた」という冷却時間を置かせない強みもあります。ただ、「とりあえず買っておくか」と思い起こさせる価格は1000円未満だなあとも思います。購入とTwitterを連動して「◯◯購入!」とか自動ツイートされたり。そのリンクから誰かが買ってくれたらキャッシュバックがあったりとか。

カナダにいた頃、何度も聞いたのは「日本の電子書籍市場は、すでにアメリカよりも大きい」という半分正解で半分誤解のフレーズです。そういう認識でいるのであれば、多分AmazonのKindleだっていつまでも傍観しているわけではないと思います。EPUBが完全日本語対応になれば、iBooksだってこの大きな市場を放置しておくわけがありません。インターフェースのブラッシュアップはすでにいろいろ考えられているとは思いますが、そこよりもやっぱりコンテンツだなと思うのです。ガンバレ、紀伊国屋。というか、目を覚ませ、出版社?

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