2008年1月6日

エピデミック / 川端裕人著

エピデミック

エピデミック
著者: 川端 裕人
出版者: 角川書店
発売日: 2007-12-01



関東地方の南端、T市にある崎浜町でインフルエンザと思われる非常に危険な病気が流行り始めた。突然高熱が出たかと思うと昏倒し、肺炎を発症して死に至る。しかも患者は複数。T市の近くまで来ていたフィールド疫学者の島袋ケイトは、T市に入って疫病の元栓を探る。

私は、疫学はメカニズムを探るものではなく、原因と結果を結びつける確率を探る科学だと思っているのですが(例えばタバコが肺ガンの原因であるということは疫学的には証明されているが、そのメカニズムが解明できているわけではない)、普遍的な何かを探るのに疫学は無力である可能性は高くても、こういう突発的に起きた疫病の原因を探り、疫病を鎮圧するためにはものすごく役に立つんだなあと思ったのでした。

私は大学に勤めているので、昨年の春に大流行した麻疹は忘れられません。この本にも書かれていますが、麻疹は珍しく空気感染する伝染病で、一人いると周りの人間が次々罹患するという恐ろしい病気。ただ、発見が早かったからか、それとも対処が良かったのか、それほど大流行にはならずに収束しました。大学が次々閉鎖されたときは、元気な大学生が逆に街に出てしまうことで次の感染を増やすだけじゃないの?と思いましたが、幸いすぐ上の世代である我々は大抵の人間が予防接種をしているし、こどもの頃に流行を経験してるので、大丈夫だったんでしょうね。自然界に無いウイルスなのに、何故再び流行するのか、とても不思議です。

というわけで、「元栓」を探るための様々なデータを集め、実際に「元栓を閉める」というフィールド疫学に沿ったストーリーの本書は、あまりなじみのない分野であっただけに面白かったです。途中メカニズムを解明しようとする科学者と、とにかく流行を収束させようとする疫学者との対立とか、現実の世界でも実際にあるんだろうなあ(実際に原因に何らかの過失があって裁判になるときなんかは疫学は役に立たないだろうし)。

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