カラスなぜ遊ぶ / 杉田昭栄著

カラス なぜ遊ぶ (集英社新書)

カラス なぜ遊ぶ (集英社新書)
著者: 杉田 昭栄
出版者: 集英社
発売日: 2004-03-01



カラスって面白いですよね。うちのゴミ置き場にもご多分にもれずカラスがやってくるのですが、人間が来ているときは近づかないとかいう暗黙のルールでもあるように思えます。まるで「俺はここにいるだけだよ、別にゴミ漁りに来てるわけじゃないんだよ」と言わんばかりに、そっぽを向いて塀の上に乗っています。が、ちらちらとこちらを見ながら、ゴミ袋に「掘り出し物」が無いか、目を光らせているようにも見えます。実際人間が離れると、さっと寄ってきたりして。駆除の対象であるカラスですが、それでも図太く生きているのは、この知恵ゆえかもしれません。

私はそんなカラスが(行動が面白いので)案外好きなのですが、カラス博士の書いた「カラス本」を読むきっかけとなったのは、別にカラス好きが高じて、ではなく、大学構内で衝撃の光景を見たからです。

ある日のこと、私は旧館の資料が必要になって、キャンパス内を歩いていました。すると「ぎゃーぎゃー」と悲鳴のような声が聞こえます。そちらの方を見てみると、地面のところで黒いカラスがバタバタやってるのです。ネズミでも見つけたのかと思いきや、カラスは一羽ではありませんでした。近づかなければわからなかったのは、一羽のカラスがひっくり返りながら羽を広げてバタバタやっていて、その近くに二羽がくっついていたからです。しかも、バタバタしているカラスを二羽のカラスが取り囲んで、胸や腹を鋭いくちばしで黙々と攻撃しているではないですか。どう見ても遊んでるという雰囲気ではありません。いじめられっ子がいじめっ子に取り囲まれて、小突かれてるという雰囲気、いやそれよりもさらにひどく、弱ったカラスを、生きたまま二羽のカラスが喰ってるという殺伐とした状況です。攻撃されてるカラスは必死の悲鳴を上げています。あまりに日常の光景になっていて普段は気にもしないカラスの鳴き声なのに、通りかかった学生がみんなが振り向いてるのは、その声が死を予感させるような不吉な声色だったからでしょう。なんとか起き上がったいじめられっ子カラスは、必死で逃げていきましたが、その後どうなったことやら。

あまりに衝撃的だったので、カラスは共食いするのか調べてみたのです。するとこの本にそのエピソードが出ているということを知りました。

早速読んでみたところ、「カラスの死体を余り見ないのは、仲間が食べてしまうから」という説があることが書かれていました。実際研究室で飼っていたカラス同士が喧嘩して、一羽が死んだとき、周りのカラスがその死んだカラスを食べてしまったというエピソードが披露されていました。

いやしかし、あれは「死んだカラスを食べた」じゃなくて、「生きてる仲間を喰おうとしていた」ように見えたんですが・・・。

その他にもカラスに関する情報満載。特にカラスは目は良いけれども鼻はあまりよくないという話は中々面白かったです。だからカラスの目に付かないところに置いておけば、生ゴミを漁られたりする可能性は低いってことですよね。しかし記憶力が良く、知恵も働くカラスだけに、一度でも「あそこには食料がある」と分かってしまったら、何をしてでも取りに来そうですけどね。この「鼻ではなく目を使う」というのが、カラスを賢く見せている理由なのかもしれないなーと思いました。人間の顔を見分けることもできるらしいというところも怖い。

残念ながらカラスの共食いの実態は解明されていませんでしたが、さらにカラスを観察してみようという気にさせる本でした。おすすめ。

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