引き続き、日本の行ってない県を潰す旅、第2弾。今回は熊本県と一部宮崎県。
熊本空港発着で、まずは阿蘇カルデラの南側を行き、高千穂で1泊、東側を北へあがって黒川温泉で2泊、さらにやまなみハイウェイ、ミルクロードで溶岩台地を走り、再び熊本空港に戻るルート。巨大カルデラを取り巻く過酷な自然環境は、人の生活にも強い影響を与えていることをすごく実感した3泊4日。
交通機関に与えている影響
阿蘇の南側ルートを通っているといくつもの湧水池があります。有名な白川水源。ペットボトルを売ってますが、持ち込んだものにも入れられそう。水源から引いた水を入れている足湯ならぬ足水があります。ものすごく冷たくて、しばらく足をつけていたら、真っ赤になってしまいました。
そして高岡湧水トンネル。
高森湧水トンネルは2km近いトンネルを歩くのですが、一体なんでこんなところにこんな立派なトンネル掘ったのだろうと思ったのです。出口付近の壁に年表が。なんと国鉄高森線と、高千穂線をつないで、延岡まで延長しようという計画があり、その計画の一部だったのですね。トンネルの最深部に行くと、それを断念した原因がわかります。大きな水脈を破断してしまい出水。周囲の水源が枯れる被害が出たのです。その後も何度も出水に見舞われ、住民の要望もあって、1977年にとうとう諦めたのだとか。
さて、その高森線ですが、2016年の熊本地震により被害を受け、いまだ全線が復旧していません。高森-中松間は復旧して走っていますが、正直それだけでは持たないのでしょう。そこを往復する観光トロッコ列車が走っています。駅前に立つ金色の彫像は、ONE PIECE作者とのコラボイベントだそうです。フランキーというキャラクターだそうで、復興支援を兼ねてこの手の像が熊本のあちこちに設置されています。また、高森駅の壁はその運動に賛同しているらしい漫画家の色紙で埋め尽くされています。ただ、この高森線、全線復旧したとして、本当に採算がとれるのかはよくわかりません。震災からすでに6年が経ちますが、地震の影響はまだあちこちで残っているようにみえました。
かつて高森線とつながる予定だった高千穂鉄道は、2005年台風14号による被害により鉄橋が流されるなどの甚大な被害を受け、再建を目指してはいたものの資金的な困難が生じて2008年に全線が廃線になっています。五ヶ瀬川は今はとても美しい静かな川なのですが、周りの地形からしても古くから山を削ってきたと思われる典型的なV字谷。むしろよくここに鉄道を通してきたと思われる場所でした。五ヶ瀬川にかかる橋梁のうち、第1、第2はこのときの台風により流失、第3橋梁だけが残ります。
この第3橋梁を含む吾味駅から八戸観音滝への約4kmが遊歩道として整備されているのですが、訪れる人も少ないのか、草生い茂るこの時期は橋から先は藪こぎが必要そうで諦めました。
下の写真は橋梁の上から。右奥に見える赤い屋根が吾味駅跡。絶景車窓だったんだろうなあ。この五ヶ瀬川沿いはあちこちに棚田が見えて、その景色も面白いです。
温泉最高
1泊目の高千穂は実は温泉地ではないのですが、2-3泊目の黒川温泉はもちろん温泉です。阿蘇一周の計画を立てていて、どこに宿泊しようかと考えてたときに「あ、ここに温泉がある」と思ってたまたま選んだのですが、このあたりでは非常に有名な温泉地なのだそう。実際に行ってみて驚きました。なんとなく昭和的な温泉街をイメージしてたのですが、町並みは和モダンに整備され、街歩きが楽しめるように工夫された小道に、小洒落たお店が立ち並ぶ素敵な場所でした。中央を流れる急流に向かって谷間に作られた温泉街のため、階段や細い道も多く、あえて徒歩での散策ができるように無料駐車場が複数整備されており、私はとても気に入りました。複数の源泉があり、宿によって泉質も様々で、多くの旅館が外来客を受け入れています。また、宿泊する宿でもよその旅館の露天風呂3か所に入ることのできる手形を販売もしています。我々は連泊だったので、この手形がついてきて温泉街をうろうろしました。
上の写真は「ひとつやのぼり」と名付けられた散歩道。平野台高原展望所というところまでたどれます。
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平野台高原展望所から、阿蘇五岳方面 |
帰りは「まるばのぼり」という散歩道を下ってきたところ、温泉街の入り口にものすごい立派なお墓があったんですね。後藤さんという方のお墓で、一体どのお宅なのだろうと思っていたのですが、宿の図書室に置かれていた本で、その後藤さんという方が黒川温泉を再興した2つの大きな旅館を持つ後藤さんだということがわかりました。その2つの旅館、山みず木(大きくて開放的な露天風呂)と新明館(洞窟風呂)はどちらも手形で入浴しに行きましたが、今の黒川温泉があるのも、この人のおかげなのかと思いました。
宿は、その温泉街の中心からさらに1kmほど先にある山河という旅館。かなり広い敷地に風呂や宿泊棟が点在していて、それもよかった。
我々が泊まった朴の木という部屋は、部屋に露天風呂(内風呂なし、露天のみ)があるタイプ。なんちゃって露天風呂じゃなくて、普通に岩風呂(笑)。
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これが部屋の露天風呂 |
洗い場も外なので、寒くなるとちょっと厳しいかもですが、この時期は本当に最高でした。宿の露天風呂は一番奥の渓流沿いで、これまた広くてすごくよかったです。この宿は泉質の違う源泉を2つ持っていて、内風呂や貸切風呂の一部がややぬるめの単純硫黄泉、部屋の風呂や露天風呂はやや鉄の香りのする高温の硫酸塩泉でした。貸切風呂も3つあって、全部入ってみましたよ。これもまた火山のおかげですね。
火山が作る地形
高千穂はカルデラを少し越えて山の向こうにあたる地域にあるわけですが、急峻な谷を流れる水が削ったV字谷と、柱状節理が見せる景観は、ものすごく印象的です。下の写真は「高千穂」といえば誰もが思い浮かべる真名井の滝。上の橋からも見えますが、五ヶ瀬川沿いが遊歩道になっていて、逆方向から見るのもきれいです。前述の鉄橋が流される被害のあった台風では、この遊歩道まで水が来て被害が出たそうです。V字谷恐ろしい。
高千穂峡の入り口の池にチョウザメがいるのですが、このあたりはきれいな水を使ってチョウザメを養殖しているそうで、つまり地元産のキャビアがあります。宿の夕食の先付にスプーンいっぱいのキャビアが出てきました。この日泊まったのは、高千穂神社にほど近い神仙という旅館だったのですが、食事が本当に美味しかった(どれも出汁が最高だった)。
高千穂峡の遊歩道はボート乗り場のある広場と神橋の間が主たる部分で、たいていの人はボート乗り場側か、神橋のたもとにある茶屋の駐車場に車を停めて歩くと思うのですが、我々は宿から歩いてきてしまったので、再び宿まで(つまりV字谷の底から台地の上へ)戻らねばなりません。神橋を渡っていると「←高千穂神社」という看板が見えたので、どうせ帰りは高千穂神社に寄るつもりだったし、道路を歩くよりも楽しいかも、という軽い気持ちでその獣道のようなルートに入ったのですが、思っていたより厳しくて、とても大変でした。斜面に張り付いてる山道を登る感じです。楽しかったけど。登りきったら、高千穂神社に裏から入れます。お盆時期あたりにコロナ感染者が急増したとかで、夜に観光向けにやってた神楽はキャンセルになってしまいました。残念。見たかったな。
山に囲まれた地形だけに秋からは雲海の名所となる国見ケ丘。早朝に行ったら、朝もやが雲海のようになって綺麗でした。
高千穂は、天孫降臨伝説のある場所。天岩戸をご神体とする神社はもちろん、様々な神話が残る場所です。なんとなくこういう雰囲気だからこそ、神話に出てきたのかなあとも思います。
阿蘇カルデラの様子がはっきりわかるのは北側。いわゆる涅槃像に例えられる阿蘇五岳を正面に見る大観峰は、カルデラの縁に突き出た岬です。五岳を見るのもよいのですが、、、
私的にハイライトは、この溶岩台地の端。ああだから、この台地の上を走るミルクラインはあんなに"もこもこ"したルートだったんだと思いました。
景色はとても良いですし、自転車のマークもあちこちにあるのですが(実際に自転車もいるのですが)、路肩はほとんどなく、道幅の割に一般乗用車だけでなくトラックの往来も多いため、かなり上級者ルートに思います。補給所も少ないので、ルートを決めるときは要注意。
神話と高千穂
阿蘇カルデラからは外れるのですが、高千穂は神話の町とも言われています。天岩戸神社は、西本宮の裏側に天岩戸(と言われるものと言ったら怒られるか)があり、神職の方に連れられて、1時間に1度ほど案内してもらえるツアーがあります。これは一見の価値あり。ご神域は写真不可。
この奥の道を出て、更に歩いていくとあるのが天安河原。川沿いに作られた歩道を歩いて10分ほど。
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