IT戦士と学生と図書館

今日は職場に図書館とは全く関わりのない業界の人が講演にいらしたのです。大まかに分類すればIT系の方ですが、多分図書館は全く使わないんだなーというのが言葉の端々に感じられて、どっぷり図書館に浸かっている私から見ると、いろんな意味で新鮮でした。一番面白かったのが、Googleのランキング形式について、いろいろ説明されたとき。あれって、Citation Indexという図書館ではものすごーい古くからある紙媒体の索引(今はオンラインデータベースになっている)をヒントにしてるんですよね。多分講演された方は、それを説くのはモチ屋にモチの作り方を説いているのと同じということは知らなかったのではないかと思われましたが、逆にそんな我々は、それらがあまりに常識で、それを全く別の分野に応用するというのを思いつけなくなっているのかもしれません。そんな旧来の情報探索技術を、面白いサービスに変換する(正にGoogleはそれで成長したわけで)のは、ああいう人なのかなとも思いました。

ただ、この方ばかりでなく、図書館が身近ではない人というのは、何も少数派ではないと思うのです。前にも書きましたが、年度も終わりというこの時期になって「図書館初めて使うんですけど」という学生が来たりします。講演の中に「図書館よりもAmazonやGoogleのほうが速いよ」という一言があったのですが、その認識が図書館から足を遠ざけてる可能性があるし、またその認識は決して間違いではありません。ただ完全に正しいかというとそうでもなく、図書館に膨大に所蔵される情報の使い方がいまいちPRされていないことにも問題があるように思われます。

春になるとキャンパスに新しい学生さんがたくさんやってきますが、そんな彼らに図書館の使い方のとっかかりを教えるのが春の大きな仕事です。なんとか学生さんに図書館の面白さ、そこでどんな風にして、どんな情報が得られるのかを伝えるためにいろいろ努力をしています。レポートを書くにも、将来社会に出てから何か情報を得るにも、図書館という情報の宝庫が上手く使えることは、恐らく武器になると思うんですよね。彼らを惹きつけようと、私がたまに例えとして使うのは、図書館はインターネットの世界がリアルに展開されているところだというもの。一つ一つの本は情報の詰まったホームページで、それぞれには請求記号(図書館の図書の背についているラベルの番号)というURL[住所]があり、それがどこにあるか調べるための検索エンジンが、図書館のオンライン蔵書目録であると。ただ、ネットと違って、オンライン蔵書目録は調べ方がGoogleほど簡単ではないし、検索機能もGoogleのように洗練されていないし、なかなか難しいんですけどね。ホームページを検索するように全文が検索できるわけではないから、雑誌に掲載された論文は別のデータベースを使わなくではならないこととかも、私たちはよくわかっているから良いけれども、学生さんたちにとって決してわかりやすいものとは言えません。最近では大学院生でさえ、Googleのように適当にキーワードを送れば、図書館の人が本を紹介してくれると思っている節もあって、メールでのレファレンスに苦労することもあります。

でも、図書館に所蔵される本は、まず売り物として編集や印刷費用をかけて世に出たモノであること+図書館の選書方針に合って蔵書として購入されたモノであること、というある程度の評価がされて所蔵されているものです。ウェブと比べると玉石混淆具合はかなり低いというのが図書館の強味。ウェブの即時性(内容、アクセス共に)には絶対にかなわないけれど、品質はある程度保証しますといったところでしょうか。あとはアクセス方法がもっと洗練されればってことですが、その辺りは今日講演された方のような外部の人にも知恵を借りると面白いのかもしれませんね。

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