[自転車]紅葉の乗鞍を越えて富山へ

1日目から続く

乗鞍高原の朝は早いです。バスターミナル近くの宿だったために、朝から頻繁に車が入ってきていることに気づいていました。10月からはご来光バスが無いので畳平行きのバスは7時が始発で、三本滝ゲートの開門も7時ですが、5時頃に起きた時はターミナルの駐車場は満車状態でした。

宿のご厚意で早朝出発のための朝ごはん(お弁当)を作っておいて貰ったので、それを食べて6時半前に出発しました。乗鞍高原は晴れでしたが、残念ながら乗鞍岳は頭が雲におおわれていました。晴れることを祈りつつ、三本滝ゲートを目指します。

三本滝ゲートにちょうど7時に到着。ゲートではたぬきが迎えてくれます。


逃げないのは、ゲートのおじさんが餌付けしてるからです。1匹側溝から首を出しているのがいましたが、その子はつい先日車に轢かれて足をけがしてしまったのだそう。「これでも大分歩けるようになったんだよ」とおじさんが言ってました。ゲートは開いており、自転車も通行は可ですが、おじさんによると頂上は濃霧で視界不良、気温はマイナス2度で15m/sくらいの強風だから無理はしないようにと忠告されました。とりあえず登れるところまで登ることにして出発します。

ふと振り返ると、雲から漏れる朝日が美しい場所に出ました。朝日が当たる乗鞍高原が神々しく見えます。


一昨年乗鞍に登ったのは9/27-28でした。その時は若干紅葉には早かったのです。しかし、今年は9月の天候不良と気温低下が原因か、9/26くらいには位ヶ原より上は見頃はじめとなったそうで、今回は遅すぎました。エコーライン内での見頃は標高2000mくらい、摩利支天から冷泉小屋くらいまででしょうか。それよりも上は落葉が目立ち始めていました。



この辺り、道の両側が落葉広葉樹で、上から見ると紅葉の道が続いているのがわかります。


位ヶ原山荘に8時頃到着。上を見るとやはり頂上は雲の中です。ダゲカンバは白い幹が目立つようになり、わずかに残るナナカマドの赤と共に、晩秋の様相を示していて、これはこれで綺麗ではあります。


山荘の方には「これでもまだ天気は良くなったんですよ」「早朝なんてこの辺も雲の中でしたから」と言われましたが、中々手ごわそうな雲。寒いので位ヶ原山荘でコーヒーをいただいて再出発しました。山荘を上から見下ろしても、ダゲカンバは白い幹になってしまっていますね。


2600mを越えて、いよいよ雲の中に突入です。前回は雲が下に見えてとても幻想的な風景だったのですが、今回は別の意味で異界へ突入する気分です。


山頂は本当に濃霧でした。そして暴風でした。


旦那が神社で以前買ったお守りを納めて、再び購入するというので待っていた時、突然雲が切れました。県境から魔王岳までさーっと陽が差し、ありえないほど真っ青な空が現れたのです。あまりのことにびっくりして、カメラを取り出すのさえ忘れていました。それまで神社からとなりのバス案内所が見えない濃霧でしたが、その時だけは駐車場も鶴ヶ池も綺麗に見えました。しかし、本当に1分も無かったと思います。再びホワイトアウトしました。あれは幻だったのではないかと思いました。山の天気は恐ろしいです。

自分の手の先まで見えないような濃霧に、岐阜側の乗鞍スカイラインを初めて下るのだったら躊躇したでしょう。幸いにして一度登って下ったことがあるので、ライト全開でゆっくり下っていきました。エコーラインも沢山の自転車が登ってきていましたが、スカイライン側も自転車がかなりいました。エコーラインは紅葉が綺麗なのでまだしも、視界の開けないスカイラインは厳しいと思いますが、みなさん頑張ってます。幸いにして歩行者はこちらは少ないので、気をつけるべきは前後からくる車(主にバス)です。雲が晴れたのは、標高2000mくらいになってからでした。途中の展望台から見える山の木が綺麗です。奥穂高もちらっと見えてます。


平湯を10時過ぎに通過しました。ここからは初めてのルートです。今回は、標高2700mというアドバンテージを活かして、日本海(富山駅)までひたすら下るルートを考えました。北陸新幹線が出来たからこそのルートです。乗鞍高原からは120km、平湯からも90km近い距離がありますが、出発が早いし、乗鞍は知っているルートで平湯に10時には着けるだろうという読みもありましたから、下りなら日没までに富山に到着できるとの判断です。

そして、飛騨へ下りてきましたので、再び五平餅の国へ入国しました。小腹が空いたので、福地温泉の五平餅村で五平餅をいただきました。注文してから焼き上げるので、15〜20分くらいかかります。案の定「どこまで行くの?」と言われたので、「富山まで」と答え呆れられました。


福地温泉は化石の産地でもあるそうです。静かな、そして素敵な温泉街でした。この辺も紅葉が見頃はじめといった感じ。


国道471号は乗鞍岳を源流とする高原川に沿っています。この川は源流が古くから噴火を繰り返している乗鞍岳や焼岳にあり、上流部は火山噴出物が堆積しているそうです。その上標高差があるため川の流れが速く、雨による土石流に悩まされていた地域だとか。

暫く行くと、旧神岡町に出ます。古くは神岡鉱山の町として、そして現在はカミオカンデのある場所として名前が知られている場所です。神岡にある道の駅でお昼を食べ、中心部のほうに出てみました。


町自体が古く、そしてどことなく鉱山の町の雰囲気が残っています。既に鉱山は閉山していますが、今もいくつかの工場は操業しているようです。



ここで471号を離れ、国道41号を走ります。余談ですが、国道471号はここから西へ向かい、一時高山本線に沿って北上後、山を抜けて能登半島へ向かうのですが、高山本線から離れた辺りからは「酷道」として有名だそう。

41号に沿って見えるのが廃線となった神岡鉄道神岡線。廃線となって10年になりますが、結構ちゃんと残っているのですね。


神岡の中心街を過ぎて少し行くと、割石温泉を通ります。その先で高原川を渡るのですが、その川と対岸の断崖が綺麗なので何気なく写真を撮りました。


しかし、この何気なく撮った写真に、実は割石の地名の元になったものが写っていました。正面の崖の真ん中に道があるのがわかるでしょうか。かつては街道があんなところを通っていたそうです。難所のひとつで、岩を割ったように道が通っているところから、割石と言われたとか。そんなところを探索してしまうレポートがヨッキれんさんの山さ行かねがにあるので、リンクはっておきます。

下を流れる美しい高原川は県境で神通川へと注ぎ、日本海に向かいます。かつて神岡鉱山から流出したカドミウムがこの川を流れ、流域に四大公害のひとつイタイイタイ病を引き起こしたことが信じられないような流れです。

最初に書いたとおり、国道41号は富山市街へ向けてひたすら下りです。道路の構造上、若干のアップダウンはありますが、全体としては下り基調です。しかしこの日は強い北風の吹く一日でした。前に旦那がいて風よけにはなっていましたが、案外きつい80km。そして自転車にとってはあまりうれしくない、ひたすら続くスノーシェッド。いやロックシェッドかもしれません。崩れた箇所なのか、明らかに川側に道路がせり出しているところもあり、またスノーシェッド上には大小の岩が落ちているところもありました。廃道・廃墟マニアにとても人気の地域だそうですが、むべなるかな。秘境中の秘境という感じです。ルートを設定しているときにトンネルを迂回する旧道を確認していたのですが、どれもこれも廃道化(または閉鎖)していました。上の写真のような崖の上の「旧道」は論外としても、現在も国道の保守にかなり苦労している様子が伺えました。最初に土石流の危険が高い場所と書きましたが、そのためかダムが多いのも特徴です。水はとても綺麗なのですけれど。

高原川が神通川と合流する場所で、岐阜県と別れ、富山県に入ります。市街地にある天然温泉、花の湯館でさっぱりして、富山駅到着。126kmの旅は日本海側を通る北陸新幹線の新しい駅で終了です。


富山駅、見た時は本当にびっくりしました。糸魚川駅も立派になってると思いましたが、富山駅の比ではありません。そして、富山の名物?でもある路面電車の駅もこの中に。


トイレの前に水飲み場がありましたが、「とやまの水」と書いてありました。いや、それって水道水ってことでしょ、と旦那がツッコミ。東京の水飲み場に「東京の水」って書かれてても美味しそうに思えませんが(むしろ躊躇するかも?)、とやまだと美味しそうに思えるのは偏見でしょうか。

北陸新幹線で日本海に沈む夕陽を見ながら、駅の「ますのすし本舗 源」で買った海鮮ぶつ切り丼を食べながら帰ってきました。

本日のルート


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