[自転車]早春の伊豆大島一周


どこで見たのか忘れてしまいましたが、伊豆大島で椿祭りが開催されており、しかもその時期は伊豆大島行きの船が割引されると知りました。そう言えば大島って行ったことないなと思って2月半ばの金曜日〜土曜日、伊豆大島へ行ってきました。

行きは金曜日22時発の神津島行き客船に乗りました。船で輪行する件は色々あったので別途備忘録として書きたいと思います(→東海汽船で伊豆大島へ自転車輪行してみた 参考)。ここでは割愛。宿泊を伴う客船に乗るのは、恐らく中国の長江を下った時以来だと思います。夜から移動して何処かに行くのって、夜行列車もそうですがワクワクしますよね。ただ、寄る年波には勝てないのか、あっという間に寝てしまい、途中経由地の横浜に入る直前のアナウンスで「間もなくベイブリッジを通過します」と言われても、そして「大桟橋に停泊しました」と言われても、起きることができませんでした。

5時起床。支度してふと外を見ると陸地の明かりが見えます。東京から横浜を経由しても実際は7時間くらいで大島に到着します。22時に東京を出ると7時間ではあまりに早く着いてしまう(着いても日の出まで時間があって出来ることが少ない)ので、予定の6時に到着できるように少し沖で停泊するようです。甲板に出てみると、餌がもらえると思ってるのか、沢山のウミネコかカモメが船の近くを周回してました。

この時期の日の出の時間は6時20分頃。夜明け前のふ頭でまずは朝ごはんを食べました。ちなみに24時間のコンビニなんていう便利なものはなく、6時に客船が到着しても開いてるお店などはありません。朝食は本土から持ち込んだほうが良いです。


東京方面へ行く船は、この岡田港(ヨミは「おかたこう」、濁らない)か、伊豆大島の中心地にある元町港のいずれかから出発します。どちらから出るかは当日9時頃にならないと分かりません。帰りも岡田港と分かっていればある程度荷物をロッカーに入れるとか出来ますが、とりあえず輪行袋なども全て自転車にくくりつけて6:30頃出発。港からぼんやり富士山が見えました。


今回はまず大島を時計回りに一周しました。大島一周道路に出た後、すぐサクラ山という場所があって、ピンクの花が咲いていました。オオシマザクラは白いので、違う種類だと思うのですが、島のあちらこちらでこのサクラ見かけました。カワヅサクラ?


島の東側は、ジャングルのように鬱蒼とヤブツバキが生い茂る場所などがありますが、こういう階段とかも面白いです。


ツバキはいろんな種類があるようで、見頃のものもあれば、もう落ちてしまったと思われるもの、まだ咲いてないのかなと思うものなど、いろいろありました。これは見頃な木々。明石潟という一番オーソドックスな品種ですね。


そして、大島といえばオオシマザクラ。カワヅザクラの親類ですが、やはり早咲き品種として有名です。そのオオシマザクラの中でも特に早咲きの寒咲大島がちょうど見頃でした。クリスマス頃から咲くものもあるそうで、春というか冬の花と言ったほうが良いかも。


東側の道路は、動物園を過ぎたあたりから一気に登ります。標高300mあたりまで登った後、波浮港へ向かって下るという、かなり厳しい道路です。でも厳しいなりに高いところに登ると景色は綺麗。遠くに見えるのは、恐らく房総半島。


眼下に見える海も蒼くて綺麗です。


その先に見えるのは、筆島。これ、元は火山の火道だったものが残ったものなんだそう。すごい。


波浮港は特徴的な形をしています。波浮地区は2段に分かれていて、上段はこのあたりからもよく見えます。


しかし港は、真ん中に穿たれた穴の下。


元々この港は火口湖だったそうです。江戸時代の大地震による津波で決壊し、海と繋がり港になりました。この高い崖は元は火口壁。その縁を快走します。


東と比べ、島の西側は栄えています。商店もあり、補給に困る可能性も少ないです。歴史的に伊豆と繋がりの深い大島。主な港も西側にあることで、西側が開けたのでしょう。

間伏の集落を抜けて少し行くと、立派な地層断面が見えてきます。「この断面、地学の教科書で見たことある!」ってやつです。


西を向いているので、撮影するならあまり朝早くないほうが良いかもしれません。上と下の写真は8:50頃撮影。


この地層、地殻変動による褶曲でこうなったのかと思ったのですが、元々の地形に並行に火山灰が乗った結果なんですって。天然の芸術作品ですね。

伊豆大島最大の集落、元町に到着。ここから三原山へ登ります。元町側から三原山に登るには、三原山登山道路(都道207号線、そうここは東京都)か、御神火スカイラインの2ルートがありますが、地図に線を引いていたときに御神火スカイラインの斜度に恐れをなして、やや距離はあるものの常識的な斜度の三原山登山道路を選択しました。こちらは良いですよ。やや緩やかな道路で、適度にU字カーブがある、私の好きな登りです。なんとなく箱根の一国を思い出させます(交通量は大島のほうがずっと少ないですが)。一方の御神火スカイラインは、箱根旧道です。距離は短いものの、単純計算で平均斜度10%。下りで使いましたが、これを登るのはかなりきついだろうと思いました。

大島温泉ホテルの分岐をすぎると、尾根伝いの景色の良い道路に出ます。三原山が綺麗に見えます。


道路もまっすぐ


登り始めた元町の町並みがはるか下に見えます。よく登ってきました(いやたった500m程度)。遠くに見えるのは、伊豆半島の山です。


御神火茶屋でコーヒーをいただき、御神火スカイラインを下りました。素晴らしい眺めです。


実は、どちらのルートで登ろうか考えていたとき、ストリートビューでこの道路を確認してたんですね。しかし(伊豆大島全体がそうなのですが)ストリートビューの情報は古いのです(2017.2現在、ストリートビューの画像はメタデータのよると2013.8撮影)。現在の御神火スカイラインは森の中を抜けるような道ではありません。何故かというと、2013年10月16日、台風26号による記録的豪雨によって、夜中に山が崩壊し、元町の神達地区を飲み込んだからです。御神火スカイラインは正にその土石流が通ったところにありました。今の御神火スカイラインは、土石流によって全てが流された山の斜面を這うように再建されています。途中には恐らく家があったところでしょう。更地に献花台が設けられている場所や、土台だけが残された土地に祠が祀られていたりする場所もありました。土石流発生からもう3年半が経ちますが、ここではまだまだ現在進行形です。


11時頃、再び元町の中心地へ戻ってきました。ここでまずはお風呂。御神火温泉という日帰り温泉施設があり、温泉に入ることができます。ナトリウム-塩化物泉で、源泉温度が低いために加温しているようです。ちょっと消毒薬臭かったのが残念でしたが、温泉は温泉です。ややぬるめのお湯と、熱めのお湯が設けられていて、下りで冷え切っていたために生き返る気持ちです。湯上がりには大島牛乳をいただきました。大島はかつてホルスタイン島と言われるほど乳牛がいたそうです。それが不況と大手の同業他社との競合で工場が閉鎖、現在は有志で乳牛を飼育し、牛乳とバターの生産を復活させてるのだとか。


元町からは富士山も見えます。見えますが、この日はややもやっていまして、かろうじて浮かび上がる富士山。


ここからはサンセットパームラインという海岸道路を行きます。対岸に波で削られた赤黒い崖が見えます。大島自体が火山によって作られた島であることを思い出させます。


元町から岡田港へは約7km。大島一周道路から一気に港へ下りて、12:30頃到着しました。ここで本日は終了。元町でお昼を食べずにここまで我慢したのは、出港までの時間が読めるからゆっくりご飯が食べられるだろうと思ったのと、岡田港が出航地にならないと開店しない漁業共同組合の食堂「浜のかあちゃんめし」に行きたかったからです。


本日の日替わりメニューは、金目鯛の煮付け定食(1000円)。旦那はそれを選択。よく考えると、金目鯛って伊豆半島でよく出ますよね(そして高級魚のイメージ)。海を挟んで反対側の伊豆大島も同じ海で魚を獲ってるわけで、そりゃ金目鯛も獲れますね。アラ汁や、小皿、おかわり自由のご飯、さらには小さい甘味も付いてこの値段は安い。金目鯛はなんと2尾分でした。


私は島の名産とも言えるべっこう丼(1000円)。ご飯にピリ辛の唐辛子醤油に漬け込んだ白身魚を乗っけたものです。青唐辛子を醤油に漬け込むと自分でも漬け用の醤油が作れるそうですが、べっこう醤油としてお土産品でも売ってました。これも美味しかった。ご飯が私の好みで、それだけでも幸せ。アラ汁にはもちろん明日葉が入ってます。この明日葉もやたらとフィーチャーされてて、お土産のお菓子やソフトクリームなんかにも使われていました。また生の明日葉がどんと束で200円で売ってました。うーん、そこまで使わないかな。。。


まだ船まで時間があるので、隣のフルーツファクトリー大屋で食後のコーヒー。大島牛乳を使ったカフェオレなどを出してくれます。外見から昔はお土産屋だったのでしょうけれども、半分を店舗、半分をキッチンに改装してカフェを営業。本業はジャム製造のようです。いろんなジャムが並んでて、試食もさせてくれます。夏みかんと、清五郎みかんで迷っていたら、いろいろ教えてくれました。夏みかんはやや苦味がつよいけれども、マーマレードとしてはいい感じ。清五郎みかんは大島でもほんの少ししかとれない甘みの強いみかんだそうで、マーマレードというよりみかんを食べてる感じでした。迷った結果、清五郎みかんのマーマレードを購入。その他にもキウイや柚子などいろいろあります。ちなみにりんごだけは大島産ではなく長野産だそうです。昔は八丈島とかでしか収穫できなかった南国の果物も、最近は品種改良と温暖化で大島でも穫れるんだそうですよ。


お土産品としては、椿油は大量にあり、あと大島バターなんかが売ってましたが、この大島バターを味わうならとおすすめされていたのが岡田港の食堂イズシチ丸で出してる塩バターラーメンだそう。次はそれにチャレンジしたいです。ちなみにバターも売っていましたが、225gで1230円、エシレバターと同レベルの価格でした。幻のバターと言われ、島外ではほぼ見られないそうです。ちょっと食べてみたいけど...

帰りは岡田港15:00発のジェット船を利用しました。竹芝(東京)へ行く最終のジェット船は15:30発ですが、それは既に前日の段階で満席だったのです。15:00発は増便で、東京直行。行きは8時間もかかったのに、帰りはなんと1時間45分で竹芝桟橋です。そこから自宅までゆるゆると自走しても15分程度。実は伊豆半島よりも伊豆大島は時間的に(料金的にも?)近いのでした。

同じ東京都ながら、あまりに離れてるために都内であることを忘れがちな伊豆諸島。今回初めて行きましたが、まだまだ見逃したものが沢山あります。波浮地区は港のところまで下りてみたいですし、東側から三原山に登るルートもあります。また、1986年の噴火で出来た割れ目火口へ行くルートもありましたし、ルートも改良余地がありそうです。何より、一周道路は本当に綺麗で、走りやすかった。それはアジア選手権や全日本自転車選手権が行われたからなのか、それとも所属する自治体がヨーロッパの一国と同じくらいの予算を有する東京都だからなのかは分かりませんが、自転車天国であることは間違いありません。ただ、案外情報が少ないかなという気も。椿の開花情報などもいろいろ探してほんの少ししかなかったり、オオシマザクラの情報も少ない。東海汽船の予約情報もやや不親切で、もう少し改良の余地があるかなと思いました。そもそもインターネット予約を受け付けるなら、せめて5時間前くらいまで受け付ければいいのにと思うのですが(現在は72時間前まで)。あとは富士山がばーんと見える快晴の日に来てみたいですね。

というわけで、東京の島を満喫した一日でした。







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