[2020パラオ旅行]パラオやハワイの日焼け止め規制


パラオでは2020年1月から、サンゴ礁に毒性のあると言われる成分が含まれる日焼け止めの持ち込み・使用を禁止しました1)。2016年に発表された調査では、オキシベンゾンが珊瑚の幼体に悪影響を与えていると言われており、しかもその毒性は濃度が極めて薄い場合でも影響があるとされています2)。美しい海とサンゴ礁を観光資源として持つ地域では、この問題に強い関心を持っているようです。

パラオで禁止される成分は、以下の通り。

紫外線吸収剤
オキシベンゾン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(オクチノキサート)、オクトクリレン、メチルベンジリデンカンファ

防腐剤
メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベン、フェノキシエタノール


私が見た限り、日本の日焼け止めのパッケージにはオクチノキサートと書かれていることは少なくて、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(または メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)と書かれていますので要注意です。私がドラッグストアで見た日焼け止めには100%入ってました。また、防腐剤はフェノキシエタノールが入っていることが多いです。つまり日本のドラッグストアで売っている一般的な日焼止めは全て持ち込み不可。最悪の場合没収だけでなく、罰金を科されます。とはいえ、のんびりなお国柄のパラオのこと、実際に入国時に手荷物検査をされたりするわけではありません。訪問者の誠意が求められます。2021年1月からは、ハワイでも オキシベンゾンとオクチノキサート入りの日焼け止めは販売・頒布が禁止されます(SB2571)。こちらは法令を読む限りでは禁止されるのは販売・流通だけで、持ち込みが禁止されるわけではありません。成分が様々な言語で書かれている日焼け止めについて、検査をしたり持ち込みを禁止したりするのは実効性に乏しく、アメリカらしい現実的な法令だと思います。しかし、上記成分が美しいサンゴに悪影響があることは科学的根拠もあり、やはりここでも人間の誠意が必要です。

塗るのがダメなら...飲む日焼け止めなら?と思う人がいるかもしれません。確かにそのようなものが2、3年前に流行りました(調べたら、2016年版の『現代用語の基礎知識』に、有名人が言い出して流行ったと書かれていた。その後の版には記述なし)。しかし、"日焼け止めを飲むというアイディアは面白いが、科学的な根拠は存在しない"3)と言われています。さらに2018年、 アメリカ食品医薬品局(FDA)は飲む日焼け止めと銘打ったサプリを売る会社に「飲む日焼け止めなんてものは存在しない、詐欺はやめろ」という警告を出しています。科学的根拠もある効果的な日焼け止めは「塗る」ものです。

では禁止成分にあたる従来の紫外線吸収剤や防腐剤の入っていない日焼止めは日本で買えるのでしょうか。正直まだ少ないです。最近大正製薬からリーフセーフ(珊瑚にやさしい)の日焼け止めを2020/2/1に発売するという発表がありました。また、沖縄の会社が珊瑚にやさしい日焼け止めを売っています。他に資生堂がドゥーエというシリーズで日焼け止めノンケミカルを売っており、この成分には禁止成分が入っていませんでした。しかし、禁止された成分が多くの(世界中の)日焼け止めに使われるのは、効果があるだけでなく塗りやすいからなのです。禁止成分である紫外線吸収剤の入っていない、自然由来の成分を使う日焼け止め剤は、延ばしにくく、白残りするのが特徴(ある意味笑えるくらい白くなる)です。ご注意ください。さらに「紫外線吸収剤不使用」と書かれている日焼け止めにも、防腐剤のパラベンやフェノキシエタノールが入っているものが多く、注意が必要です。

このような規制はパラオが最初だそうですが、前述のように日本人観光客も多いハワイでも規制されると、サンゴ礁を売り物とする海洋諸国に徐々に浸透していく可能性もあり、そうするとサンゴに優しい日焼け止めの開発も進むかもしれません。ただ、現時点ではまだ市場は追いついていないですね。ちなみにパラオで日焼け止めを塗らないのは自殺行為です。現地の人は塗ってない人も多そうですが、彼らとは違うので日焼けには本当に気をつけて。

引用文献
(1) "Responsible Tourism Education Act of 2018" https://www.palaugov.pw/wp-content/uploads/2018/08/Proposed-Legislation-re.-Responsible-Tourism-Education-Act-of-2018.pdf(access 2020-01-18)

(2)Downs, C., et al. Toxicopathological Effects of the Sunscreen UV Filter, Oxybenzone (Benzophenone-3), on Coral Planulae and Cultured Primary Cells and Its Environmental Contamination in Hawaii and the U.S. Virgin Islands. Archives of Environmental Contamination and Toxicology. 2016, vol. 70, no. 2, p. 265–288.

(3)Biba, Erin. The sunscreen pill: a tablet that protects against sunburn is an attractive idea, but the science is patchy. Nature. 2014, vol. 515, no. 7527.

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