羽田空港第3ターミナルに、昨年夏以降「共同キオスク」が導入されました。これが典型的な“残念DX”。動線無視で、本当にこれ使う人が考えた?と思うような代物なのです。
前提:入国までのルート(羽田第3ターミナルの場合)
到着後の流れは大きく3パターンあります(※検疫は特に何かするわけではないので括弧にしています)。
ア:従来型(紙の税関申告)
着陸 →(検疫)→ 顔認証ゲート(入国審査)→ 荷物受取 → 税関申告書を係員に提示 → 税関ゲート
イ:税関のみ端末で申告(Visit Japan WebのQR)
着陸 →(検疫)→ 顔認証ゲート(入国審査)→ 荷物受取 → 端末で申告(Visit JapanのQRを読み取り、パスポートをかざして登録)→ 税関ゲート
ウ:共同キオスク+ウォークスルーゲート(WTG)
着陸 →(検疫)→ 共同キオスクで登録(Visit JapanのQR読み取り+パスポート読み取り+顔写真登録)→ WTGで入国 → 税関もWTG
政府としては、おそらく「ウ」に寄せたいのだろうと思います。共同キオスクとWTGは、最近いくつかの国際空港にソロソロと導入され始めています。私が羽田第3で初めて見たのは去年11月(台湾から帰国時)だったかな。導入時期を見ると昨年GWのオーストラリア帰りにもあったのだと思いますが、その時は気づきませんでした。
そもそも共同キオスク+WTGは本当に便利なのか?
共同キオスクの狙いは「入国審査と税関申告をまとめて済ませ、対面審査が不要な人はWTGで通れるようにする」ことです。対象は日本人・外国人を問いません。
ただ、日本の従来の顔認証ゲート自体はよくできています。諸外国のように事前登録がなくても、パスポートだけで比較的スムーズに通れます。
そのため「イ」より「ウ」が(特に日本人にとって)明確に便利かと言われると、正直かなり微妙です。
“便利”と言える点を挙げるなら、以下くらいでしょう。
- 入国審査でWTGが使える
- 荷物受取後の税関も、追加操作なしでWTGを通れる(はず)
- まだ利用者が少なく、従来の顔認証ゲートより空いていることがある
ただし、現状は動線がちぐはぐで、メリットを打ち消しています。
どこが残念?
1) Visit Japan Webを開き、QRコードを共同端末にかざす必要あり
ただ、このサイト自体が使いにくい上、旅券番号を入れてログインさせているのに、作成したQRコードを共同キオスクにかざさなければならないのです。世界中の人を一意に識別できる「旅券番号」があるのだし、実際にキオスクにはパスポートを開いて読ませます。入力情報は旅券番号で管理すればいいのに、と思ってしまいます。端末前にきてからログイン→QRコードを開くといった操作をする人がいるから、時間もかかり、効率悪いです。
2) 共同キオスクで登録(QR+パスポート+顔写真)
パスポートコントロール付近に点在する共同キオスクで、
- Visit JapanのQRコードを読み取り
- (Visit Japanに入力したときにも「間違いない」をクリックしてるのに)持ち込み品の質問の回答が出て、しつこく「間違いないか」聞かれる
- パスポートを読み取り
- 顔写真を撮影
- (外国人の場合は、この後指紋をとるというフェーズがあるようです)
すると、自分が通るべきルート(a/b/c/d)が表示されます。
問題は端末が「点在している」ことです。全員が必ず通る導線上に置いて、そこで“強制的に一度だけ”やらせる設計ならまだ分かります。ところが入国審査には従来の顔認証ゲートも大量に並んでおり、共同キオスクは廊下の壁際に数台並んでいるだけで、何をするものなのかよくわかりません。またここで共同キオスクを使うことは必須ではありませんので、係員が強く誘導するわけでもありません。
さらに、日本は多くの国と違って、いまだに紙の税関申告書という方法も残しています。つまり、Visit Japanでの申告自体が必須でもない。
端末数も多くないので、共同キオスクをスルーする人が出るのは当然です(そしてスルーしても、顔認証ゲートで普通に入国できてしまう)。
3) WTGの入口が分かりにくい/運用が混乱を生む
共同キオスクで登録していれば、該当者はWTGを通れます。
しかし羽田第3のWTGは1つしかなく、入口表示も小さく「a/bの人はこちら」程度(そもそも共同キオスクを使っていない人にとって、aとかbとか書いてあっても何のことかわからない)。
結果として、
- 共同キオスクを使ったのにWTGに気づかず、結局ふつうに顔認証ゲートに並ぶ人
- 共同キオスクを使っていないのに、空いているからとWTGに入ってしまう人
が混在します。
後者はゲートで「登録されていない」と弾かれて戻ることになります(私たちも初遭遇時にこの状態になりました)。
WTG入口には比較的大きなディスプレイがあり、自分の顔が映るとその上に先ほどのa/b/c/dが表示される仕組みがあります。また、共同キオスク未利用者は顔が登録されていないので「?」になりますが、それに気づく人は少ないです(私も最初の時?と出ているのには気づいていましたが、それではこのゲートは通れないという意味には受け取れませんでした)。この仕掛け自体は面白いのですが、そもそも迷う人が出ないように設計・案内するのが先では?と思います。
4) 入国を急いでも、荷物受取に時間がかかる
入国審査後、荷物を受け取って税関へ行きます。共同キオスクを使っていれば、表示されたa/b/c/dの方向に進めばよいだけで、場合によってはほぼスルーで抜けられます。
共同キオスクを使っていない人は、ここで改めて
- Visit Japan+パスポートで端末登録してa/b/c/dを得る
または
- 紙の申告書を書いて提出する
ことになります。ここで、多少共同キオスク利用のメリットが出るのですが、そもそも荷物が出てこない!なので、上記税関ゲート向けの端末操作は「荷物待ちの時間にやればいい」のです。本当に速くなるのは、受取荷物がない人くらいで、国際線の場合は少ないでしょう。
結論:導線と制度設計が中途半端すぎ
一度経験すれば「入国審査前にある共同キオスクを使えばいいんだな」と分かるので、慣れれば便利かもしれません。また、外国人の場合は顔認証ゲートではなく、ブース審査になるので、こちらの方が便利かもしれません。
しかし現状は、
- 共同キオスクと入国審査のWTGの導線がうまく結びついていない
- 税関の前に荷物受取というステップがある以上、入国審査を必要以上に早く通り抜けても意味はなく、メリットが薄い。
という、かなり残念な状態に見えます。
最近は「自動化ゲート+事前オンライン申告」を導入する国が増えていますが、日本のやり方は“残念DX”そのものに感じます。やるなら、旧来の顔認証ゲートを並存させず、日本人も外国人もWTGの統一方式に一気に切り替えるくらいの覚悟が欲しかったです。
また、紙の申告を残してしまうのも中途半端です。「できない人がいるから」というのは言い訳で、紙を残すなら紙の方は例外で、非常に時間がかかる(=デジタルへの強いインセンティブを働かせる)くらいの設計でもよいはずです。
私の中で理想はシンガポールです。
- オンラインで複数人分の申告をまとめて済ませられる(紙の申告は存在しない)
- ゲートでウェブサイトやアプリを開き直す必要がない
- ゲートの読取機にパスポートを置くと、国籍に合わせて案内言語が自動切替
- カメラを見るだけで顔認証され、そのまま通過できる
参考までに、オーストラリアは端末がずらっと並び、パスポートを置くとやはり国籍で言語が切り替えられ、タッチパネルで質問に答えると、ゲートに挿入するカードが発行される方式でした。事前オンライン入力が不要という意味では、機械が苦手な人にも受け入れやすいのかもしれません。
――共同キオスクは、目的は分かる。でも今の設計と運用のままだと「税金かけて何がしたかった?」「本当に必要?」という疑問が消えません。
皆さんも今度導入されている国際空港から入国する際はぜひ使ってみて(無駄を感じて)ください。

コメント
コメントを投稿